トレッキング・アウトドア・ヤングサポーター育成

アウトドア

地域やアウトドアに若者が関わる意味|アウトドアヤングサポーター育成

2023年、早くも冬至が過ぎて、そろそろシーズンイン…とそわそわし始めています。Verdeでは、アウトドアプログラムは12月から2月まではお休み。受注事業や、宿泊業と旅行業を小さく稼働させながら、次シーズンのの楽しいことを妄想・企画するオフシーズンを過ごしています。

冬は「ヤングサポーター育成」に最適

すっかりベルデの冬の恒例イベントとなっている大学生と冬のアウトドアを過ごす「ヤングサポーター育成事業」、この冬も、この事業の山の部をベルデに任せていただきました。

ベルデのガイド陣・仲間が総出演、試行錯誤の1年目の経験を活かし、2年目はインターンとアルバイトで関わってくれている大学生をリーダーに展開。そして、3回目の今回は、過去本事業を受講した大学生がリーダーとして新しい大学生受講生を先導する、そのためのリーダー育成を意識してみました。

みえアウトドア・ヤングサポーター育成事業は、豊かな自然「海・山・川」それぞれのフィールドでアクティビティを楽しみながら、安全管理について学び、災害時などで役に立つアウトドア技術を身につけ、地域のアウトドア・サポーターの育成を目的にしています。三重大学の環境リテラシー学を受講している大学生とともに、ベルデのフィールド三重県大台町でも3年前から「山」をテーマに開催してきました。過去のブログでは実技や体験アクティビティの紹介がメインでしたが、今回は講義セッションの一部を紹介します!

かっこいいアウトドア愛好家って?

「かっこいいアウトドア愛好家」って? この実習で初めてテント泊をする、初めてカヤックに乗る、初めて火を起こす…アウトドアで過ごすことが基本初めての、高校を卒業したばかりの19歳の大学生たち。彼らはどんなアウトドア愛好家をかっこいいと考えるか。セッションに必要な知識・情報を伝えながら思考してもらいました。

アウトドア・ヤングサポーター育成
火を囲んでセッション

アウトドアでの活動を「安全」と「規則」と「モラル」の3つのポジションから考えてみる。

セッション1:真冬のキャンプ、とっても寒いテントの中でストーブを焚きたい

「安全」の情報・知識を得て、判断する。

冬キャンプのテント内での一酸化炭素中毒は本当に要注意です。密室空間でストーブをたくなど酸素が少なくなる状況で一酸化炭素が発生する。見えない物質のため、気づくことなくあっという間に死にいたるリスクがあります。また、コンクリート上で焚火をすることも危険。コンクリートに閉じ込められている酸素が熱で膨張し、爆発に至ることがあります。

開催日は、実習としてファイヤーワークやテント泊を予定していました。残念ながら、冬の寒い雨・夜中には雪が降る予報となり、実習場所をベルデのゲストハウス前半屋内のスペースや倉庫に変更していいました。滞在中に、アスファルトのうえで焚火やテント泊をする際のリスクマネジメントを意識したセッションでもあります。

テント泊・アウトドア・ヤングサポーター育成
雪のため室内キャンプ・リスクマネジメントは?

セッション2:自然豊かな大台町でキャンプしたい、宮川沿いの公園でキャンプしていいの?

「規則(条例)」の情報・知識を得る = キャンプは大台町全域で禁止です。

大台町では、キャンプによるゴミ、し尿その他の汚物による環境汚染及び水質汚染並びに騒音等の弊害から、本町の美しい自然環境と町民の良好な生活環境を守ることを目的に、キャンプの指定地を設け、指定地以外の地域におけるキャンプを禁止する条例を制定しています。

現在、本町が指定するキャンプ指定地は次のとおりです。

神滝地区 : 久保井戸橋付近の河川敷で橋の上流50mから下流50mまでの区間 / 滝谷地区 :  大熊谷合流付近の河川敷き入川口の上流50mから下流100mまでの区間 / 岩井地区 : 犂谷公園付近の河川敷で犂谷バス停の上流30mから下流200mまでの区間」

大台町役場 生活環境課WEB

個人的には、この地域全面キャンプ禁止という条例を20年以上前に制定し、「キャンプによるゴミ、し尿その他の汚物による環境汚染及び水質汚染並びに騒音等の弊害」から地域を守る、というメッセージをわかりやすく伝え、公衆トイレが近く安全で、地域住民の居住地から一定距離離れた場所に限定されたキャンプ指定地をつくったことは、過去においてとても画期的なものだと思います。

この条例がなければ、キャンプブームの今、宮川沿いや山林の至る所でキャンプをする人であふれ、自然や地域住民の生活環境が荒れていったと想像できます。

ただ、キャンプ指定地であっても、実はこんな状態になっています。残念ながら条例制定時はは5カ所あった指定地が今は3カ所に縮小されています。

セッション3:地域はどんな人に来てもらいたいのか? 

「モラル」から考え、自らの行動に繋げる。

「地域はどんな人に来てもらいたいのか?」 この「地域」には、地域住民から地域に持続的に存在する自然も含まれると定義します。実はベルデが、自然環境リテラシーやヤングサポーター育成事業の受講生たち、つまり若者に考えて意識・行動に繋げてほしい最大のテーマでもあります。リーダー、受講生にこの事業を通じてメッセージとしました。

レスポンシブル・ツーリズムは、アウトドア愛好家がお手本

私は、写真のような直火をし、ゴミを残すモラルがないアウトドア愛好家が悪い、だから禁止にしようという考えはとても単純でつまらないという立場です。

そもそも、例えば、直火が環境に負荷をかけることを意識しない人も多い。つまり、今回の受講生のように規則やモラル・リスクマネジメントをまだ知らない、思考したことがない人が手軽にアウトドアフィールドに遊びに来てくれるようになってます。地域の1住民、この地域のアウトフィッターとしては、人口8,600人、世界が認める地域全体がユネスコエコパーク認定されている自然環境をもつ地域を、域外の方(観光客)に知ってもらい、来訪してもらい、楽しんでもらうことは、地域の活性化・新たなステージへ移行するために必要不可欠なこと、と考えています。(もちろんこれは一個人としての考えであり、地域住民全員が…ではありません)

そして、知らない・思考したことがない人に対してメッセージを伝える人を育てることがこのアウトドア・ヤングサポーター育成事業であり、私たちのようなアウトフィッターの責任でもあると思っています。

「地域はこんな人に来てほしい」というメッセージを明確に発信するプロモーション・マーケティングがされ、そのメッセージが伝わり、地域を愛してくれる人に来訪してもらうことは、地域住民の誇りや元気に繋がるはずです。地域のアウトフィッターとして、自然をつかわせてもらっているだけでなく、小さくともメッセージや取組を伝えられる事業者でありたいと常に自覚しています。

コロナ後は、多くのエリアが「レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)」の必要性を認めるようになっています。観光客が意識や行動に責任を持つことで、より良い観光地形成を行っていこうという考え方で、自分の行動が地域や環境へ負荷を与えてしまうかも知れないことを認識し、自律した行動を実践していく、という考え方。アウトドア・ツーリズムやアドベンチャー・ツーリズムの対象となる地域は、この「レスポンシブル・ツーリズム」をとても近いところで必要としていると考えています。

私見が入り脱線してしまいましたが、こんなセッションを通して、受講生に学びというと大袈裟です、気づき・思考のきっかけをアウトドア環境でパスしています。

講義メニューと受講生のアウトプット

今回のヤングサポーター育成事業で任された講義は全部で5講義。ベルデが担当するものもあれば、Verde大台ツーリズムのツアーガイドを任せている大杉谷山岳救助隊長の森さんが登場したり、学生リーダーが担当したりする講義もあり、とってもバリエーション豊かです。

  • かっこいいアウトドア愛好家について考えるセッション【自然体験の魅力と自然活用のマナー】
  • 登山ツアーの実際【山をフィールドとした自然体験の魅力】
  • E-bikeツアーの実際【アクティビティ体験の説明】
  • ファイヤーワーク【災害などに使えるアウトドア技術】
  • 大杉谷山岳救助隊の経験【レスキューの実際】

ちなみに、実技では、トレッキングやロープワーク、テント泊にアウトドアクッキング、サイクリングを実施しています。

今回は軽い紹介で恐縮です。アウトドアクッキング、見事だったので次のブログで紹介しますね。

自然のなかに放り込まれ、アクティビティを体験する実技・実習で感動し・学び・気づくこともとっても大切。その体験・経験と知識や思考を繋げ、意識・行動ができ、さらに人に伝えられるようなアウトドア・ヤングサポーターを育成する。個人の意識レベルではありますが、まずはベルデ自身の成長を毎年感じられる楽しいお仕事です。・・・という気持ちで仕事をしていれば受講する若者の成長も必ずあるはず、と言い訳っぽいまとめです。

受講生のログ(リンク)がとっても面白いので一部紹介します。

今回は、ベルデが関わるアウトドア・ヤングサポーター育成事業の「山」、それも講義についてフォーカスしたブログでしたが、この事業は、大台の山だけでなく、三重県南部地域の海・川フィールドでも実施されています。受講生は、熊野街道をシーカヤックでツーリングしたり、奇跡の川と呼ばれる銚子川でカヤックを体験したり、林業や漁業について知る機会をもらったり、キャンプしたり…。「ヤング」でないけど、毎年ベルデも受講したいと思ってしまうほど充実の内容です。三重大の自然環境リテラシー学としての継続した学びもあり、受講生の若者たちは活動の様子をしっかりテキスト化しているので、興味がある方はこちらも覗いてみてください。(2022自然環境リテラシー学日誌

アウトドアや地域に若者が関わる意味のヒントがあるような気がしています。

↑ 2020年、1年目のブログはこちら
↑ 2021年、ちょっと成長した2年目のブログはこちら

実は若者は「環境意識が高い」という実際

2022シーズン、VerdeのSUPガイドはインターン生も含めると、10代2名・20代3名・30代1名の若者が関わってくれました。アウトドア専門学校の学生さんと会話すると、環境への負荷について学ぶ機会も多くあり、SDGsを現在進行形で学びながらトレーニングしているとのこと。

恥ずかしい話ですが、彼女とガイド準備中に公園で丘釣りをしているシニアの方が、川に向けて放尿している姿を見かけたことがありました。平然としているおじさんを見て、「近くに公衆トイレがあるのに理解できない」・・・アウトドアで遊ぶときは常に携帯トイレをもっていくという彼女はかなりショックを受けていました。

Verdeのゲストにも若い世代は年々増えていてます。若者は、自然・自然体験に対して価値を求め対価を払うことに柔軟で素直。彼らと話していると、装備さえ揃えれば自然はタダという考えや、安いあそびをしたいと考えているのでなく、価値あるフィールドや体験と自身の貴重な時間との交換が大切で、必要なフィーは躊躇なく支払う、Verdeにもそんなゲストが多くなっているように思います。

一方で、フリーで利用するアクティビティ層も年々増えていて、公園については、5年前のゴーストパークを思うと、認知来訪プロモーションとしては成功ですが、それにともなうハード・ソフト・観光経済面が間に合っていません。観光、特にネイチャーツーリズムは、公共事業でも民間だけの事業でもなく、共益事業です。民としての責任、官がすべきこと、それぞれ整理し、【大台の自然を愛し、節度があり、経済をまわす人】を呼び込む地域・会社であるよう、解決そたいと考える2023年スタートです。これを解決できないと、若者世代に呆れられ、選ばれない寂しい地域になっていく気がしています。


アウトドアの初心者から上級者までさまざまなフィールドを楽しむことができる三重県大台町。ひとりでも多くの人がスポーツジムへ行くような感覚で何度も訪れたいと思ってもらえるエリアになると嬉しいです。

アウトドアレジャーやスポーツがだれにとっても身近なものとなり、豊かな自然からエネルギーをもらうことで幸せな人生を送れますように。そして、私たちのガイドは、このアウトドアライフが「お仕事」になるような活動を続けていきたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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