アウトドア

森にとまる水とあそぶ流儀~環境リテラシー学最終章~

緊急事態宣言による延期で、4回5回の三重大環境リテラシー学はまとめて3泊4日で3月最終週に実施。前半は、森にじっくりとまってキャンプ飯&E-bike満喫。後半は、森の達人と水とあそぶ「てんから釣り」の実習です。

最後はベルデがやりたいことを詰め込んだリテラシーです💦

森とまる・水とあそぶⅣ「キャンプ飯と大台の木」

【森にとまる水とあそぶ7日目】

■ガイダンス「節度ある・経済をまわす・自然がすきな人」

■チェーンソーワーク:スウェーデントーチづくり&薪割り

■「道の駅奥伊勢おおだい」の食材チェック

■地域の食材をつかったキャンプ飯プランニング

「地域を大切にする節度あるキャンパーに来てほしい、そんなキャンパーが地元の木をつかった焚火と食材をつかった(=経済をまわす)キャンプ飯をつくってくれたら嬉しい」なんて地域側の想いを伝えながら、いきなりスウェーデントーチづくりに挑戦です。大台リテラシー6日目の総門山登山の途中で見学した林業施業地から仕入れたヒノキ。「てんころ」と呼ばれる通常はチップに加工されるヒノキの根元の部分を、チェーンソーで切れ目を入れることでトーチに生まれ変わらせます。このチェーンソーワークや薪割でつくった木材を火種としキャンプ飯にこだわった3泊4日がスタート!

【森にとまる水とあそぶ8日目】

■テント設営(薗区キャンプ地へ)

E-bikeプログラムの撮影協力 : 奥伊勢フォレストピア

キャンプ飯づくり&テントサウナ

8日目には、薗地区のキャンプ許可地へ移動。ここは、まさしく「森にとまる」…素敵なリテラシー学専用のキャンプ地です。学生さんは自分たちのテントの設営はもう慣れたもの。今回は新兵器の「テントサウナ」まで準備して、まだまだ寒い夜に大活躍でした。

続いて、奥伊勢フォレストピアE-bike導入サポート。この春からE-bikeのレンタルを稼働しているフォレストピアからの依頼を受け、学生さんたちがモデルとなり周辺コースを撮影サイクリング。

森にとまる・水とあそぶⅤ「てんから釣りの流儀」

【森にとまる水とあそぶ9、10日目】

■森正裕さんから学ぶ「てんから釣り」の奥義

■仕掛をつくり、薗川で釣ってみよう

■大台の水源・大熊川で釣ってみよう

■スウェーデントーチをつかったキャンプ飯

■リテラシーの総括

後半は、水とあそぶプログラム。宮川森林組合所属・大杉谷山岳救助隊長、そしてVerde大台ツーリズムのツアーガイドさんでもある森正裕氏に教わるてんから釣りがメインです。

ちょっとその前に、こだわって計画したキャンプ飯。道の駅奥伊勢おおだいで購入した地元食材をつかっての飯テロをご覧ください。初回のリテラシーはお鍋ひとつにインスタントラーメン(これも美味しいですが)が武器だった学生さんたちの成長です。

さて、てんから釣りは、完全に私がやってみたかったプログラムです。達人の森正裕さんを師匠に2日間のてんから体験を実施しましたが、実は、学生さんの釣果は0。成功体験がないまま終わっていいものか…と心配していたけど、坂本先生はこんなふうにご自身のFacebookで振り返っていました。

「2日目は、大熊川へ。ほとんど人が入らないところなので、恐ろしく、川がキレイ。道から見ても、魚影がくっきりと見える。わずか二時間ほどだが、三重大組は、わずか一尾、森仙人は5尾釣り上げた!刺身と素揚げでいただく。恐ろしく旨い。二日間で、学生たちの釣果はゼロ。「体験として、よかったかなぁ?」と、プランを考えてくれた、Verdeの野田さんは気にしてくれたけど、川魚も過酷な環境の中で、天敵と戦いながら、一生懸命生きているわけで、それを、そんなに簡単に釣り上げられるわけがない。スーパーとかでお金を出せば簡単に食い物が手に入る便利な世の中の中で、こちらが技を極めなければ食べ物を確保することが難しいことを、命をいただくことの難しさを体験・実感しておくべきなのである。今回で、大台でのはじめての自然環境リテラシー学プログラムは一旦終了。まだまだ語り尽くせないことばかり。とても素晴らしい、森でとまる・水と遊ぶプログラムが開発できた、と思う。ただ釣りをして遊んでいるのではない。アマゴやイワナやアユなどの川魚は、綺麗な清流にしか生息しない。川魚やテンカラ釣りを通して、自然環境を知るのである。アウトドアブームだが、実は、人間が入らない場所は、自然環境は豊かである。本来、そこは人間が立ち入って撹乱してはいけない場所なのである。そこに立ち入るためには、流儀がある。それこそが、自然環境リテラシーなのである。これは、決して教室の中では、机上では学ぶことはできない。自然の中でこそ知ることができる、感覚、学びである。センス・オブ・ワンダーである。この感覚なくして、自然との共生は理解し得ない。この感覚なくして、持続可能な地球を創造することは難しい。」

Tats Sakamoto Facebook引用

環境リテラシー学は、Verdeが関わる大台だけでなく、尾鷲市・紀北町・南伊勢市・多気町・志摩市・明和町でも実施。各地10日間、半年で60日間にも及んだリテラシーを支えたものは…

コロナ禍のリテラシー学

例年、尾鷲市と南伊勢町の2カ所4泊5日30名近い参加者のもと実施されたリテラシーが、分散型・少人数制(大台に参加の学生は7名)となった理由のひとつは、新型コロナウイルス感染拡大の影響です。大台での初回の11月は比較的感染状況は落ち着いていたものの、1月に入り企画していた第3回は緊急事態宣言発令の直前でなんとか開催。4・5回は宣言真っ最中であり、県境をまたいで移動する学生もいたため、延期されました。

1人用テントでネイチャーディスタンス

コロナと観光業の落ち込み、感染のリスクと営業受入は当然ながら比例します。第3回(緊急事態宣言発令直前)のリテラシーのホームとした地域の観光拠点・奥伊勢フォレストピアには、このリテラシーの開催をリスクを負って受け入れてもらいました。町の第三セクターであり、地域を守る施設でもある観光施設に、少人数に絞ったとはいえ10名を超す団体が宿泊目的でなく研究活動目的で訪問することを快く受け入れてくれて心から感謝しています。

そして、多くの活動が制限されたこの1年で、リテラシー学のような大学の研究活動を実施までもっていた先生たちの胆力は驚くべきものでした。「アウトドアでの研究・教育活動に関する新型コロナウィルス感染症対策指針」を厳格に守るためのアナウンス、とくに「ガイド・参加者すべての人に対して、COVID-19感染防止対策の重要性を理解してもらい、遠征などの実施2週間前からの日常生活を含む行動変容を実施する」という規定により実習前後2週間(つまり1カ月間)の行動履歴調査と行動変容は徹底され、「1人でも感染者が出たらすべてのエリアのリテラシーは中止」と何度もメッセージが飛び交うなかでこの実習は行われていました。

感染のリスクがあるから中止にするのは簡単だし、現場実習は中止、オンライン研究にしてもだれにも文句は言われない、むしろ大学の教育現場はオンライン授業が普通です。一方で、何がリスクかを洗い出し、その対策を徹底的に講じることで、感染防止行動を習慣化し、実習開催への説得力とする…このフローは、まさしくこの環境リテラシー学で伝えるべき「リスクマネジメント」だと思います。三重大学の坂本先生や山本先生は敢えて学生さんへこの労力を言葉で伝えていないのだろうけど、半年間で60日間ものリテラシー学に同行し、学生さんと同じようにテント泊をし、焚火をみつめ…という姿勢は「信頼できる大人」として学生さんにインプットされていることでしょう。

学生さん目線でのコロナとリテラシーについて、このnoteが感動的です。

源流のまちでの新しいチャレンジに感謝を

年度末ぎりぎりの3月31日に、全10日5回の三重大学環境リテラシー学「森にとまる水とあそぶ」プログラムが終了しました。(リテラシー全体では4月18日南伊勢での開催が最終日)実施から2週間以上経過。新型コロナウイルスの感染者を1人も出さず、無事終えることができました。

大海原はないけど、豪快なキャンプやシーカヤックはできないけど、源流を守る地域だからこそ伝えられることがある、と確信をもてたリテラシーでした。まだまだベルデのリテラシーは拙いけれど、2020年度は、このリテラシーのお陰で新しいチャレンジができた、と胸を張って言えます。最後になりましたが、学生さん・学生スタッフさん・そして三重大学の先生たち・共に大台の魅力を伝えた地域の仲間に感謝申し上げます。

  • 奥伊勢フォレストピアの皆様(地域の課題共有・E-bikeプログラム・登山道整備プログラムへの協力)
  • 森正裕氏(てんから釣り体験のガイディング)
  • 蕨野祐樹氏・美幸氏(キャンプのガイディング)
  • 薗区の皆様(キャンプ地を快く使わせて頂きました)
  • フォレストファイターズ(林業施業地の見学・チェーンソーワークのサポート)
  • 大杉谷登山センター(環境協力金のお話)
  • 宮川上流漁協組合(てんから釣り体験への支援)
坂本先生はシルエットで

学生さんたちのリテラシーの成果はこちら。かなりの読み応えです。

※このブログに掲載している写真は、三重大自然環境リテラシー学参加学生・スタッフ・先生たちの撮影です。


アウトドアの初心者から上級者までさまざまなフィールドを楽しむことができる三重県大台町。ひとりでも多くの人がスポーツジムへ行くような感覚で何度も訪れたいと思ってもらえるエリアになると嬉しいです。

アウトドアレジャーやスポーツがだれにとっても身近なものとなり,豊かな自然からエネルギーをもらうことで幸せな人生を送れますように。そして,私たちのガイドは,このアウトドアライフが「お仕事」になるような活動を続けていきたいと思います。

最後までお読み頂き,ありがとうございました。

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