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森にとまるマナー・大学生に共有した地域の課題

三重大学環境リテラシー学の振り返り。今回の記事では、2020年12月実施の第2回と、2021年1月実施の第3回の大台・森にとまる水とあそぶコースを紹介します。

第2・3回はまさしく「森にとまる」プログラム。ガチンコキャンプと山の仕事を知ってもらいました。

ユネスコエコパークに登録された地域で

三重県大台町は、ユネスコエコパークに地域全体が登録された希少貴重な自然が残るエリアです。(国立公園・国定公園・天然記念物登録も)ベルデは、この地域の自然環境を活かしたプログラム・ツアー販売を業とし、ユネスコエコパークの理念である「生態系の保全と持続可能な利活用の調和=自然と人間社会の共生」に向けた地域づくりに繋がる仕事がしたいと自覚してガイドツアーを実施しています。

大杉谷 シシ淵
核心地域の大杉谷登山道「シシ淵」

ユネスコが1976年に開始した生物圏保全地域(国内呼称:ユネスコエコパーク)は、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的としており、保護・保全だけではなく自然と人間社会の共生に重点がおかれている。世界自然遺産が、顕著な普遍的価値を有する自然地域を保護・保全することが目的であることに対している。

核心地域:厳格に保護・長期的に保全

緩衝地域:核心地域を保護するための感傷的な地域。教育、研修、エコツーリズムに活用

移行地域:人が生活し、自然と調和した持続可能な発展を実現する地域

生物圏保全地域(ユネスコエコパーク)について

このリテラシー学において授業のフィールドに核心地域(大杉谷の深部)は含まれていません。学生さんは、緩衝地域・移行地域の自然のなかでそこに暮らす人・遊びに来る人について、思考してもらいました。

空前のアウトドア・キャンプブームの影で

2020年は、新型コロナウイルス感染拡大とキャンプブームが重なり、私たちの地域も例年とは違う夏を過ごしています。

キャンプ指定地

三重県大台町には5カ所のキャンプ指定地があります。ここは「無料キャンプ場」とも呼ばれ、(キャンプ指定地とは、「無料キャンプ場」ではなく、マナーを守ってキャンプをしていい場所。指定地以外はキャンプはしてはいけない、と条例でルール化されています)2020年は本当に多くの方が遊びに来てくれました。また、SUPやカヤック、バス釣り、レガッタ等、アクティビティが盛んな宮川静水域は、渓谷が残る地形のため、乗降できるスポットが2カ所の公園に限定されています。ここも時期的なオーバーツーリズム状態です。

多くの人が来訪し、地域経済が回るというプラスの側面もありますが、キャンパー・アウトドアアクティビティ愛好家の急増・オーバーツーリズムによる自然への負荷・地域への負荷に直面した1年でした。

一方で、過去、観光誘客を目的に自然に少し手を加えた森や登山道が閑散としている現実もあります。このまま手を加え続け、森・登山道として残していくべきか、自然に還すべきか…。

「観光×経済」「自然×経済」地域はどんな人に来てもらいたいのか?

学生さんへはこんな現状を共有しながら、地域の課題を知ってもらう時間をつくりました。これは、地域や学生さんへというより、私たち、自然を利活用して持続可能なお仕事を目指しているベルデの大きな課題です。

観光事業者である以上、「地域を知ってほしい / 地域外から多くの人に来てほしい / 来訪者の方には消費を促すコンテンツを紹介したい / 楽しんでもらいたい / 地域のファンになって何度も来てもらいたい」…こんなことを考えてお仕事をしています。こうした経済を意識した仕事は、この地域の大切な自然資源にどう影響を与えるのか、どのバランスが適正なのか、本当に難しい課題を学生さんに五月雨に投げかけてみました。

キーワードは、「観光×経済」「自然×経済」

大台町“森にとまる・水とあそぶ”Ⅱ「節度あるキャンプを!」

キャンプには、「アウトドアだから・・・トイレがなくても大丈夫、近くの山から薪材をひろってくる、川の水でクッカーを洗う・・・」なんとなく豪快に解決することが正解のようなイメージがあります。こんなキャンプは地域にとってハッピーなのか?

今回のリテラシーでは、これが正しいキャンプです、と方法を伝えたいのではなく、初めてアウトドアで夜を過ごす学生さんに知ってもらいたいキャンプのマナーを伝えました。ユネスコエコパークで森にとまる人が知っておいてほしいというカリキュラムです。第3回の先生は、SUPガイド・大杉谷登山センター職員としても活躍のワラビ&みゆきちゃん。

【森にとまる水とあそぶ3日目】

■キャンプ指定地「カラスキ谷公園」集合

■テントの設営・・・「野外での優先順位とは」

■ナイフの使い方・・・カトラリーづくり

■火床をつくり焚火を使った調理

■私たちが考えるキャンプの役割

【森にとまる水とあそぶ4日目】

■火床で米を炊く・朝食

■テント撤収・・・「美しいキャンパー」

■ちょこっと登山・・・古ケ丸山の尾根登り

第3回は学生さんたちにとって印象に残る回だったようです。noteで活動の様子を生き生きと紹介してくれています。

大台町“森にとまる・水とあそぶ”Ⅲ「森の利活用・奥伊勢フォレストピアにて」

大台町には、キャンプ指定地やアクティビティ向けの公園のようにオーバーツーリズムのスポットもあれば、逆に、素晴らしいスポットであり、来訪を促す取組(林道や山道をつける)をしながらも、なかなか活用されていない森や登山道もあります。

第3回のリテラシー学では、総門山ヒメシャラの森や、地域のマイナーな登山道を残す取組、そして、ユネスコエコパーク移行地域の産業。林業の施業地を見学する登山です。

【森にとまる水とあそぶ5日目】

■地域の観光拠点「奥伊勢フォレストピア」へ集合・・・第3回の主役の奥伊勢フォレストピアです

■三条山の登山道整備・・・真冬の山へ,登山道を残すために

■あそび場づくりプロジェクトについて・・・奥伊勢フォレストピア関係者とのセッション「観光の光と影」

【森にとまる水とあそぶ6日目】

■地図読み登山:北総門山 野鳥の森コース 登り

■ヒメシャラの森~木道:あそび場づくりプロジェクト構想

■林業施業地: フォレストファイターズの案内で林業の現場をみてみよう

林業の施業地。標高800m近い真冬の山で凍えながら、この重機や木材を興味深く見入っている学生さんもいました。前日の整備含めて、登山+αを感じてもらえたらうれしいです。

それにしても、第3回は、私たちのリアルな情報と課題を学生さんに与えすぎてしまったな、と少しの後悔があります。(写真や動画・資料を見返しても多岐にわたり膨大な量…)このリテラシー学で出会う学生さんはお客様でもなく、コンサルでもなく、この10日間で自然を活用する楽しさや難しさを共にする仲間になってほしいな、と思いつつ、情報を与える以外の方法を私がもう少し学ばなければ、と自戒した回でもありました。

真面目な反省はこんなですが、正直なところ、若者と共有する時間は楽しくて…喋りすぎちゃうんです。

今回はここまで。次回、リテラシー編ラスト3泊4日のキャンプとまとめを記事にします。

※このブログに掲載している写真は、三重大自然環境リテラシー学参加学生・スタッフ・先生たちの撮影です。

アウトドアの初心者から上級者までさまざまなフィールドを楽しむことができる三重県大台町。ひとりでも多くの人がスポーツジムへ行くような感覚で何度も訪れたいと思ってもらえるエリアになると嬉しいです。

アウトドアレジャーやスポーツがだれにとっても身近なものとなり,豊かな自然からエネルギーをもらうことで幸せな人生を送れますように。そして,私たちのガイドは,このアウトドアライフが「お仕事」になるような活動を続けていきたいと思います。

最後までお読み頂き,ありがとうございました。

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