ワーケーション

ワーケーション導入で見えてきた、三重県大台町の可能性

コロナ禍を期に新しい旅と働き方のスタイルとして注目されているワーケーション。三重県大台町のアウトドア旅行会社ベルデでは、2020年3月よりワーケーション導入に向けてモニターツアーや環境整備を行ってきました。そのおかげで2021年は、ベルデが運営するゲストハウスでのワーケーション利用が増加中! そこから見えてきた、地方でのワーケーションの課題と可能性をご報告します。

ベルデのワーケーションは、フリーランスさんウエルカムです!

東京のIT企業が三重県大台町でワーケーション

働き方改革と新型コロナ流行に伴う「新しい日常」のあり方として、各地でいろいろな取り組みが行われている「ワーケーション」。三重県大台町にあるベルデに初めてワーケーションの風が吹いたのは、2020年初春のことでした。

東京にあるWEBアプリ制作会社さんから突然お電話を頂き、「ベルデのゲストハウスのWEBサイトを見た。素敵なゲストハウスのようなので長期滞在をしたいと考えている」との相談が。詳しい背景を伺うと、「東京オリンピックの期間、会社まるごと地方へ移設することが可能かをテストしたい」というのです。

正直それまでは、「ワーケーションは大手企業の取り組み。大人数に宿泊いただける施設がない(※)大台町にワーケーションの需要があるのかな?」と疑問に思っていたのですが「あるんだ!」と驚き、受け入れ準備をはじめた次第です。

(※)2021年3月にフェアフィールド・バイ・マリオット・三重おおだいさんが開業した今は事情が変わりました

準備を経て3月にお越しいただいたのは、会社を代表してリサーチに来られた20代WEBエンジニアの男性3名さま。ベルデが運営するゲストハウス「宿屋まてまて」と「まてハウス」に12日間宿泊いただき、平日はフルタイムでのリモート勤務、土日はBBQやサイクリング、SUPなどのアクティビティを体験いただきました。

ここで意外だったのは、ベルデとしては一棟貸しの「宿屋まてまて」の方が喜ばれると思っていたのですが、ワーケーションは、まてハウスの方がしやすいという回答をいただいたこと。リノベーションしてあり綺麗な「宿屋まてまて」より、田舎の民家そのままだけど個室利用ができる「まてハウス」の方が、個別に作業するスペースを持てて集中して仕事ができたというのです。「なるほど、ニーズの違いだな」と思いました。

一方で、アウトドアアクティビティには3名さまとも大喜び。本格登山や川遊びができるとい以上に、「仕事を終えてすぐにBBQや焚き火が始められる環境が最高!」という感想を頂戴しました。ここも、従来のベルデのお客様層とは違って面白かったです。

客層が広がりそうだと、ワーケーション導入にチャレンジしてみることにしました。

大台町のワーケーションは、BtoCをターゲットに!

WEBアプリ制作会社さんのワーケーションをきっかけに、ベルデは地域の基幹となる宿泊施設「奥伊勢フォレストピア」さんとともにワーケーション導入を準備し始めました。

スタートアップとして実施したことは、大きく分けると、

①ワーケーション滞在プランの企画・モニタリングの実施 

②受入環境整備 です。

大手企業をターゲットにしたワーケーションプランは、団体客誘致が難しい大台町では現実的ではありません。

そこでワーケーションプランのターゲットはBtoCに設定。より具体的には「フリーランスとそのファミリー」と設定して「森にとまる水と遊ぶ」をテーマにモニターを募集したところ、

【A】アウトドア雑誌のデザインや制作を仕事にしているご夫婦(50代)

【B】WEBディレクター・ライターの女性(40代)

【C】投資家・キャンプブロガーの男性(30代)とそのファミリー(奥様、3歳と1歳のお子様)

のフリーランスの方が応募。2020年9月から順に大台町ワーケーションを体験いただきました。

具体的なプランはモニターの希望を反映しつつ下記のような内容に。

【A】の夫妻にはキャンプサイトに宿泊してのワーク、カヤックプランを提供。「空飛ぶカヤックを撮影したい」という目的も叶う滞在となりました。

【B】のライター女性からは「ワーケーションでどんなことができるのか知りたい」ということで盛りだくさんのリクエストをいただき、奥伊勢フォレストピアのコテージを拠点に、朝活登山ハイキングや夜はイタリアンのケータリング(関係者MTGとして活用)、土日はSUPや大杉谷日帰り登山まで行動範囲の広いワーケーションを体験いただきました。

【C】のファミリーさまは、家族の時間をゆったりとるためのワーケーションプランを希望。一棟貸しゲストハウス「宿屋まてまて」に宿泊いただき、最大8人乗りのメガサップでのファミリークルージングや、ゲストハウスの庭でのBBQ、お子さまも楽しめるOneWheelを体験いただきました。

モニターツアーを参考に企画したのが下記のワーケーションプランです!詳細はブログをご覧ください。

モニタリングの結果をもとに、受け入れ環境を整備

モニターによるワーケーションスタートアップを経て、大台町ではベルデを中心に2021年から本格的にワーケーションプランを販売することになりました。

まずはモニタリング結果をもとに、受け入れ環境を整備。

奥伊勢フォレストピアでは、

・テントサイトのWifi環境整備

・滞在中の二次交通としてのE-bike(電動スポーツバイク)の導入

・ラウンジをワークスペースとして整備

ベルデ大台ツーリズムでは、

・子どもと親子で乗れるタンデムSUPを導入

・ゲストハウスから離れたスポットでのワークができるようモバイルWi-Fiを購入

することで、より幅広い層にアクティビティを展開できる環境を整えました。

紀伊半島三県議会交流会議で報告

なお、このモニターによるワーケーションスタートアップは、三重県の「ワーケーション受入体制構築のためのモデル事業」を活用したこともあって、2021年7月後半に「紀伊半島三県議会交流会議」で大台町におけるワーケーションの推進について報告することに。

これを期に、地域の実情にあったワーケーションの推進が進むなら、資料を作ってお話をさせていただきました。

三重県や和歌山県の議員さんの前でお話しした内容を、以下で一部ご紹介しますね!

ベルデが取り組んだ課題と解決策

2020年にワーケーションスタートアップに取り組んでみたベルデであり大台町ですが、そこから見えてきたのは3つの現状と課題。いずれも地方の観光事業者に共通する課題ではないかと思います。

【1】Wi-FiなどのIT環境

三重県でも山間部に位置する大台町は、林業をはじめとする一次産業が盛ん。逆をいうとIT環境はローカルだったのですが、精度の高いWi-Fi機器やモバイルWi-Fiを導入したことで大きく改善しました。

ワーケーションをB to Bで実施するのであればセキュリティなど高度な環境が必要ですが、B to Cがターゲットであれば、フリーランスの方の仕事に対応できる環境としては合格だと考えています。

【2】交通アクセスへの課題

一方で、二次交通はまだ懸案事項です。当初、地域内のレンタカーサービスの導入を考えていましたが、モニタリングの結果、「町内でのワーケーションだけでなく、伊勢神宮や熊野、せっかくなので広く三重県を訪問したい。その際、ハブになるエリアでレンタカーを借りたい」との意見が強いことがわかりました。

広域観光のハブとなるエリアとしては、この地域では松阪駅がニーズに応えられるエリアです。

理想となる導線は下記になります。

【公共交通機関】東京→名古屋→松阪
【レンタカー】松阪でレンタル→大台町でワーケーション
        →伊勢・鳥羽・熊野など三重南部でバケーション
        →伊勢で車を乗り捨てして帰京

この導線は、ワーケーションに限らず、地域を訪れる観光の方のニーズともマッチングしますので、今後のサービスとしてチャレンジしていきたいと考えています。

また域内の移動はE-bikeでという計画でいます。E-bikeは二次交通としてはもちろん、アクティビティとしても地域全体で受入環境を整えていくべきと考え、関係者と現在進行形で協議をしているところです。

今年の秋以降、ベルデのWEBサイトでもE-bikeツアーを充実させていく予定ですのでお楽しみに!

【3】ターゲットとの販売価格のギャップ

もうひとつ、モニターへのヒアリングから改めて確認できたことは、ワーケーション利用希望者…今回でいうとフリーランスの方と、宿泊施設としての販売希望価格とのギャップです。

ワーケーション利用者は連泊利用するので、当然お得に利用したい。一方で宿泊施設は、通常の部屋提供と同等の売上がほしいのが正直なところです。

オンシーズンにはしっかり部屋料金を払ってくれる観光客の方ほうが宿泊施設にとってはありがたい。観光のお客様を断ってまで価格帯の低いワーケーションを推進します、という体制は観光事業者には取れません。

そのため現状ベルデや奥伊勢フォレストピアではワーケーションプランを、オフシーズンの連泊のお客様を呼び込むための誘客の多角化のひとつ、また山荘もある・コテージもある・キャンプもある・ワーケーションまでできる!というイメージ戦略の一環のつもりで取り組んでいます。

ご興味のある方は、一度ワーケーションプランを覗いてみてくださいね。

ワーケーションって本当に需要があるのか?

最後にお伝えしたいのがワーケーションの需要です。今や全国でワーケーション、ワーケーションとなっていますが、「いったい需要がどれほどあるのかと?」疑問視している旅行会社さんや宿泊施設さんは多いのではないかと思います。

ベルデでは今年2021年3月より、三重県が用意した県内のワーケーションまとめサイトと紐づけてワーケーションプランを販売していますが、実際の利用者は宿屋まてまてで3件、奥伊勢フォレストピアで0件(2020年7月現在)というのが現状です。

一方で、ベルデのゲストハウス「まてハウス」はADDressという多拠点コリビングサービスに登録。チャレンジのつもりでの登録でしたが、5日~1週間の滞在客が多く、予想を超えた活気ある利用状況となりました。

ADDressは月額利用料を収めれば全国の登録施設泊まりたい放題という、サブスクリプションサービス

ワーケーション層は実際にいる!

ADDressとの連携から見えてきたのは、特定の拠点を持たずこうした施設を渡り歩くワーケーション利用者(ノマドワーカー)が実際にいるということ。施設を丁寧に使ってくださるし、お話を聞いてみると感度が高いフリーランスや企業勤めの方が多くて刺激を受けます。

こうした連泊してくれる層は、従来のベルデの客層とは全く違うので、客層を広げる上でとてもよい挑戦だったなと実感しています。

ただ、宿泊施設としての売り上げはかなり低いので、一般的な施設では難しい試みと思います。

一方で観光・観光経済ではなく、空き家対策・関係人口増加を目的とした施設であれば、得るものは大きいと思います。地方移住のハードルは高いですが、都市と地方を行き来する関係人口から増やすのはそこまで難しくないでしょう。

またADDress会員に代表されるようなノマド・ワーケーション層は、連泊をしつつ、ローカルの魅力を丁寧に楽しんでくれる人々が多いと感じています。観光経済からすると従来の団体ツアーのような利用のされ方の方が収益は高いですが、それは大台町のような地方にとっては環境を荒らすことにもつながりかねません。

長期的に見るとこうしたローカルの魅力を丁寧に楽しんでくれる人々が、定期的に訪れてくれると嬉しい。ベルデが来ていただきたいと思う客層だなと考えています。

ワーケーション利用者のためにゲストハウスを改装中!

ワーケーション利用が増加中のベルデのゲストハウス「まてハウス」では、宿泊者アンケートで要望が高かったワークスペースを新たに作りました。

また、リビングやゆるり土間などの共有スペースを少しずつ改装中。このあたりの取り組みは、後日改めてブログで紹介しますのでお楽しみに!

お仕事目的でこられたお客さまには「すごい田舎!」と言われることの多い大台町。公共交通機関だけでは移動が大変なので、車で来ていただくのが一番かなと思っています。コンビニや自動販売機は少ないけれど、夜空の星の数は都会にはない素晴らしさです。

これまでアウトドアと縁のなかった方も、まてハウスでのワーケーションを通じて、田舎暮らしやライトなアウトドア体験を楽しんでいただけると嬉しいです。


アウトドアの初心者から上級者までさまざまなフィールドを楽しむことができる三重県大台町。ひとりでも多くの人がスポーツジムへ行くような感覚で何度も訪れたいと思ってもらえるエリアになると嬉しいです。

アウトドアレジャーやスポーツがだれにとっても身近なものとなり,豊かな自然からエネルギーをもらうことで幸せな人生を送れますように。そして、私たちのガイドは、このアウトドアライフが「お仕事」になるような活動を続けていきたいと思います。

最後までお読み頂き,ありがとうございました。

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