ベルデのSUPやカヌープログラムのフィールドは三重県宮川です。国土交通省が選ぶ「水質が最も良好な河川」になんども選ばれたており、2024年も栄えある「清流日本一」に返り咲きました。こうした調査で選ばれる川に共通していることは、どの川も上流部に都市がないということ。川の汚れは人の生活によって大きく左右されることがうかがえます。今回のブログでは、「三重を撮るインフルエンサー」ふがまるちゃんとの撮影会を通してみる宮川の美しさと、その美しさ=地域の宝を知ってもらい、守っていくことについてベルデが考えていることを紹介します。
★★★この記事のもくじ
ふがまるちゃんって どんな人?
三重県出身・在住のカメラマンで「三重を撮る写真家」として2016年から活動中。2024年10月現在、Instagramのフォロワー10.6万人、Xは2万人のインフルエンサーでもあります。三重県観光連盟のサイト「観光三重」では三重旅アンバサダーとして三重に関する様々な記事を執筆しているため、三重の観光スポットを検索するとかなりの確率でふがまるちゃんの記事やSNS投稿にあたり、三重旅のプランニングに助けられている方はかなりいると思います。
そんなふがまるちゃんとベルデとの関りは遡ること、ふがまるちゃんが活動を始められた2016年。この年はちょうどVerdeがアクティビティ部門を旅行業とつなげて創業した年でもあります。お互いに駆け出しのころ、お仕事でなくプライベートでSUPプログラムに参加し、撮影された写真を共有してもらったことがきっかけです。懐かしい・・・この写真はVerdeのガイドがもっている防水のコンパクトカメラで撮影されたもの。撮る人によってこんなに風景は変るんだ・・・と感心しきりでした。
ふがまるちゃんと出会って以降、SNSやブログの記事でその活躍を頻繁におみかけする(本当に大活躍で!)ことはもちろんですが、地域の自然や観光スポットの取材に来てくれたり、イベントの記録写真を依頼したり、と継続した関りをもたせてもらっています。
「宮川ブルー」を撮っていみたい!
そんなふがまるちゃんには、会うたびに「VerdeさんのSUP宮川最上流ツアーに参加して、宮川ブルーを撮りたいんです」と伝えられていました。「宮川ブルー」とは、宮川上流域、静水域と流水域の境目1kmほどの区間、ボードが空を飛んでいるような写真が撮れる透明度がマックスのフィールドでみられる水のことです。
気軽にすぐ行けるフィールドではないことも「宮川ブルー」の価値です。宮川上流は渓谷が深く、もちろん、歩いてなんていけません。SUPやカヤック、ボートでしか行けないフィールドです。太陽、風、前日までの降水量、ダムが管理している水位、水温等、も良好であることも宮川ブルーと出会える条件ですが、加えて、谷風が吹くフィールドでもあるため、SUPで向かうと少しハード。Verdeのツアーでは、SUP経験者・リピーター様限定で1日ゆっくりたっぷり漕いで、ランチや水遊びを楽しんでもらうコースとして6~9月に催行しています。
この秋、撮影しよう!と、ふがまるちゃんと設定した撮影日、一般参加者も募集していた初日は残念ながら曇天のため中止。予備日(10月1日)は絶好の条件で撮影ができました。ベルデのスマホで撮影した写真でもこんなに素敵。
それにしても、さすがはふがまるちゃんで、あっという間に様々な機器でどんどん撮影が進み、写真はもちろん動画もサクサクとってくれます。素晴らしい動画はInstagramのリールやストーリーで来シーズンイン前に公開されるそうなので、とっても楽しみです。これぞ、透明度MAX「宮川ブルー」です。
バズったスポットをどうするか?
ところで、影響力のあるふがまるちゃんがSNSで投稿し、多くの人に知ってもらったスポットは三重県各所にあります。ベルデのフィールド近くの真手丸山公園もそのひとつ。2022年頃から「トトロの森」として紅葉の様子をアップされ、昨年は見事にバズり、あっという間に観光スポットになりました。駐車場が広くなく、公園までのルートも地域道でもあることから、突然溢れた来訪者に地元はびっくり。ベルデ自身も、この地域の住民として、いたるところで見かけた無法駐車に驚き、思うところはあります。
実は、近い状況が、宮川の駐車場問題として継続的に起きています。そのきっかけは、10年前にこの宮川でパドルスポーツをプログラムとして始めて、宮川をPRしたVerdeにもあると自覚しています。
たとえば地元で自分たちしか知らないような、お気に入りのビーチがあるとして。喧騒とは無縁の、慣れ親しんだ海と空がいつでも無条件に包み込んでくれる、日常でふっと心をゆるませられる場所……。それがある日突然、SNSをきっかけに注目を集め、連日のように観光客が押し寄せるようになり、映える写真を撮ることに夢中な人たちで賑わうようになったとしたら? 癒しのひとときを過ごせなくなった気持ち、その海でのんびり暮らす生き物たちの心境は? 毎日たくさんの人がやってきては、プライベートエリアを荒らして帰っていく日々が、当たり前に繰り返されるようになったとしたら?
こうした、バズった地域の「オーバーツーリズム」について、発信者(インフルエンサーや事業者)や来訪者への問題意識を問うテキストはよく見かけるのですが、私自身は、発信者・来訪者だけでなく、受入側の責任もともにあると考えています。
今後、「喧騒とは無縁の・・・」=地域住民がごくごく少数楽しむ公園(自然そのままでなく維持管理が必要な状態に変えてしまったスポット)が、いつまで維持されるのでしょう? 人口がすごい勢いで減っている自治体にその維持管理がいつまで可能なのでしょう? 人が訪れず草刈りの手も行き届かない、苔がついたベンチが残っている、そんな公園や休憩場所もみている地域住民として、景観の維持には地域住民の気持ち・情熱だけでは足りないコストが必要と強く実感しています。
訪問者が増えることを一括りに「ツーリズム」と表現すると、ツーリズムは、経済的・社会文化的な新興を目指すことができます。新興まではいかなくとも、維持管理、そして保全に繋がる産業です。
誰もが知っている観光地でない地域では、来訪者を一時的な地域住民ととらえ、ともに地域を守っていく・つくっていく大切な存在であると捉えると、このオーバーツーリズムの問題ももっとシンプルになるのではないでしょうか? SNSがきっかけであっても、人が認知し、遠方からわざわざ来てもらえるスポットこそ「地域の宝」です。そこに経済的・社会的な仕組みをつくること、そしてオーバーツーリズムを回避するためのバランスを意識的にとること、これはバズったスポット=地域の宝を守るために、地域自身が来訪者とともに取り組むべきことだと考えています。
Verdeで宮川SUPプログラムをスタートして、そろそろ10年目になります。スタートしたころは、ゴーストパークだったもみじの里公園やさくらの里公園は、今では7~9月のお天気のいい日は駐車場がいっぱいになり、近く県道の空きスペースにも車が停められています。これも「宮川ブルー」のお陰です。
取り合いの駐車場をよく思っていない、地域住民や古くからの宮川ファンがいることも理解しています。こうした来訪者・アクティビティ愛好家のみなさんが地域への貢献を意識しながら気持ちよく遊べるスポットとして未来に残していきたい。そろそろ、この地域でアクティビティを催行しているアウトフィッターとして社会的な責任を果たせる取組をしたいな、と考えています。
ふがまるちゃんの今年のトトロの森の投稿。誰も知らないゴーストパークだったスポットをバズらせてくれただけでなく、現状の自治体の対応、地域の対応、駐車場の案内、立ち寄りスポットまで紹介してくれています。発信者の責任を十分以上に果たしてくれています。
先日、ふがまるちゃんのSNSをきっかけにバズったスポット「オハイ」へ遊びに行き、登山道のPRと現地案内、保全管理について、受入側の責任について、たいへん勉強になりました。今回は長くなったので、次の記事でレポートします。
“観光×アウトドア”を提案する旅行会社「Verde(ベルデ)大台ツーリズム」代表。 SUP・カヤック・登山ガイド → 起業 → ゲストハウス「宿屋まてまて」&「まてハウス」運営。このブログは「アウトドアライフをお仕事に」をテーマに発信します。